獣医師が解説する犬の血尿  〜原因、考えられる病気、対処法〜

血尿とは、尿中に異常に赤血球が存在することで、獣医臨床の現場では非常によくみられる症状です。様々な原因によっておこる血尿ですが、場合によっては数日でよくなることも、また非常に深刻な事態であることもあります。ここでは、血尿を起こす可能性のある原因、およびその診断方法、対処法について詳しくご説明していきたいと思います。

犬が血尿を起こす出血はどこから?どのような原因で起きているの?

犬の血尿の原因には大きく分けて、泌尿器によるものと泌尿器以外によるものが挙げられます。

また、血尿のタイミングとして排尿の初めに血尿が認められるか、常に血尿が認められるあるいは排尿の最後に血尿が認められかによって、おおむね問題となる部位が推測できます。

 

排尿の初めに血尿が認められる場合(初期血尿)

泌尿器によるものでは、犬の下部尿路(膀胱頸、尿道、膣、外陰部、陰茎、包皮)からの出血やが考えられます。

これらの出血の原因としては、外傷、感染、尿石症、腫瘍などが挙げられます。

また、泌尿器以外の原因として、発情前期、子宮炎、子宮蓄膿症、前立腺疾患、生殖器の腫瘍などが初期血尿の原因として考えられます。

 

常に血尿が認められる場合および排尿の最後に血尿が認められる場合(終末期血尿)

犬の血尿で泌尿器が原因となるもので、犬の上部尿路(膀胱、尿管、腎臓)からの出血が考えられます。

これらの出血の原因としては、外傷、感染、尿石症、腫瘍、寄生虫症薬物によるもの(シクロホスファミド)などが挙げられます。

終末期血尿は、赤血球が膀胱内に沈殿し排尿の最後に排出されるため、タイミングによって血尿がみられたりみられなかったりします。

また、泌尿器以外の原因として、前立腺疾患や止血異常、激しい運動によるものや、熱射病などが終末期血尿の原因として考えられます。

また、偽血尿といって、血尿のようにみえるけれども、実際には血尿ではないこともあります。

これは、筋色素あるいは血色素、薬物、および自然・人工食品色素が尿中に混入することによって起こります。

 

血尿以外にどのような症状がみられていますか?

上記に示しましたように、血尿と一言でいっても原因は様々で、それによって伴う症状も違ってきます。どのような症状を伴う可能性があるのか詳しくみていきましょう。

犬の下部尿路からの出血による血尿

犬の下部尿路の炎症、外傷、腫瘍などが原因で血尿が認められるときは、通常血尿と共に、頻尿(何度もトイレにいきたがる)、排尿痛(尿をするとき痛そうにする)、排尿困難(トイレの体勢をとるけれども、なかなかするにいたらない)などが挙げられます。

犬の上部尿路からの出血による血尿

犬の上部尿路の炎症、外傷、感染、腫瘍などが原因で血尿が認められるときは、血尿以外なんの症状もみられないこともあれば、元気消失、食欲不振、嘔吐、下痢、体重減少、腹部痛のような全身症状を伴うこともあります。

犬の生殖器からの出血による血尿

犬の生殖器からの出血が原因で血尿が認められるときは、排尿とは無関係な突発的な出血や、化膿性の膣または尿道分泌物が認められることがあります。

また犬が発情前期だった場合、行動の変化、前立腺疾患では、不自然な歩様を伴うしぶり(妙な歩き方をして便の体勢をとるも通常のように便がでない)などがみられることがあります。

 

血尿の原因を探るための検査はどのようなものがあるの?その診断法は?

犬の血尿の原因は様々なものが考えられます。

その原因を探るため検査も色々と行われることがあります。以下に考えられる検査、診断法を記していきます。

 

犬の血尿の原因を探るための検査 その1 ~触診~

  • 犬の腎臓の触診:大きさ、形、硬さ、対称性、疼痛の有無など
  • 犬の膀胱の触診(排尿前後で行う):腫瘤、結石など
  • 犬の直腸の触診:雄犬の前立腺チェック、雄雌犬の骨盤部尿道の評価、小型犬では膀胱三角(膀胱から尿道に移行する部位)のチェックなど
  • 犬の膣の触診:大型雌犬では膣の腫瘤、狭窄、裂傷など
  • 犬の陰茎の触診:経皮的に陰茎の付け根から先までチェック、また陰茎を包皮から露出させ腫瘤、外傷、尿道脱などの有無をチェック

※犬の体格が大きくなるほど、細かな臓器の触診が困難になることが考えられます。

 

犬の血尿の原因を探るための検査 その2 ~尿検査~

犬の血尿の原因を探るため、尿検査は血尿では必須の検査です。

犬の尿の採取方法

正確な尿検査を行うためには、尿は20分以内に採取した新鮮な犬の尿が必要となります。

最も理想的には動物病院で膀胱穿刺をして採取した尿がよいとされていますが、その他カテーテルを用いて尿採取を行う場合もあります。

犬の飼い主のみなさんが尿を採取する場合は、きれいに洗ったお玉を使うと採取しやすいです。

犬の尿比重

尿比重は、低張尿1.001〜1,007、等張尿1.008〜1.012、軽度濃縮尿1.013〜1.030、高張尿>1.030に分類されます。

腎臓できちんと尿が濃縮出来るか推測できます。

犬の脱水状態、基礎疾患、薬物の投与、血清尿素窒素やクレアチニン濃度などによっても影響してきますので、考慮に入れる必要があります。

尿試験紙(尿スティック)

赤血球の溶解により生成したヘモグロビンのペルオキシターゼ様活性を測定することにより、尿中の血液を検出します。

その他、尿中のPHがどれくらいかなど様々な項目を一挙に検査していきます。

尿沈渣

尿沈渣では、赤血球のほかに、白血球、上皮細胞、腫瘍細胞、円柱、結晶、寄生虫、細菌を評価します。血尿の検査では、特にこの検査が決定的な診断に至ることも多くあります。

 

犬の血尿の原因を探るための検査 その3 ~超音波検査・レントゲン検査~

犬の腎臓、犬の膀胱、犬の生殖器系に焦点をあてて、結石や腫瘤がないかチェックします。

 

血尿を起こす最も多い病気は?

獣医臨床現場で、飼い犬の血尿を心配されて来院される患者さんは珍しくありません。

上記した血尿の原因の項目のなかで、色々な病気についても列記しましたが、トップ2を挙げるとすると膀胱炎、結石症です。年齢も考慮に入れる必要があり、若齢では先天的な膀胱異常や、高齢では膀胱炎腫瘍、前立腺腫瘍といった腫瘍疾患も念頭にいれておく必要があります。

 

愛犬の血尿を発見したら、どう対処したらよい?

愛犬の血尿に気づいたら、まずどのタイミングで血尿がでるのか、排尿のたびに血尿なのか、尿の頻度に違いはあるのかなどを注意深く観察しましょう。

血尿が原因となる犬の病気には述べてきましたように、様々な問題があり、数日程度で治ることもあれば、命にかかわる非常に深刻な事態になることもあります。

なので、血尿を発見したら素人判断せず、愛犬をなるべく早く動物病院に連れていくことをおすすめします。

犬の新鮮な尿が採取できるようなら、それも持参しましょう。

特に、緊急で動物病院に駆け込む必要がある症状としては、犬が尿が出たいのに一切出てこない状態であったり、血尿以外に元気消失、食欲不振などの全身症状が認められる場合などです。治療に至るまでの時間で予後が変わってくることもありますので、気をつけましょう。