【動物看護士が解説!】愛犬がてんかんを起こしたら!?原因や症状、対処法。治療方法から考えられる病気


てんかんとは?

「てんかん」とは、自分の意思とは関係なく、勝手に体の筋肉が強く収縮して動いてしまう発作です。

WHO(世界保健機関)による「てんかん」の定義は、「種種の病因によってもたらされる慢性の脳疾患であり、大脳ニューロンの過剰な放電から由来する反復性の発作を主徴とし、それに病変に富んだ臨床並びに検査所見の表出が伴う」とされています。要するに、脳の疾患です。人間でも、まれな病気ではなく、子供や高齢者に多くみられます。

脳の中でも、脳の上方の大部分を占める大脳と呼ばれる部位にある「ニューロン」と呼ばれる神経細胞の異常になります。

ニューロンは神経細胞であり、電気信号を発して情報をやりとりする特殊な細胞です。

正常であれば、正しい電気信号が送られ、自分の意志に合わせた筋肉の収縮が起こり、体を動かすことができます。

しかしながら、てんかんが起こると、大脳のニューロンと呼ばれる神経細胞に突然激しい電気的な興奮がおこり、自分の意志に関係なく体が動いてしまう発作が繰り返されてしまいます。

このように、てんかんは、大脳のニューロンを由来とした発作であり、大脳のニューロンを由来としない不随意運動(自分の意志とは無関係に筋肉が動くこと)は、てんかんではありません。

てんかんの症状は多種多様ですが、当然起こり、短時間で回復することが特徴です。

それぞれの発作の現れ方はほぼ同一に起こります。つまり、その人またはその犬におけるてんかんの症状の現れ方は、ほぼ一緒で、発作のたびに違う症状が出る場合は、他の病気が疑われます。

「てんかん」と「痙攣」の違い

てんかんの症状を見ると、痙攣と表現する人も多いですが、異なります。

てんかんは、上でも説明しましたが、「自分の意思とは関係なく、勝手に体の筋肉が強く収縮して起こる病気、疾患」で、繰り返し、慢性的に発作が起きることが特徴です。

一方、痙攣は、高熱、感染症、電解質異常、薬物、頭蓋内疾患などによって引き起こされる症状の一つで、原因である病気や中毒が改善されれば起きない、一過性の発作になります。

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2018.02.08

ウィペット

犬のてんかんとは?

犬のてんかんも人間のてんかんと同じで、てんかんとは、大脳の異常によって引き起こされる痙攣発作などを繰り返す病気です。

犬のてんかんは、

  1. 「特発性てんかん」
  2. 「症候性てんかん」
  3. 「頭蓋外性」

にわけられます。

質問犬

犬の特発性てんかん

特発性てんかんとは、約3歳までの若い年齢から起こる犬に多いのが特徴で、生後半年で起こす場合もあります。
この特発性てんかんは、検査をしてもはっきりとした異常が見つからないものです。
犬のてんかんの場合は突発性てんかんのほうが多いです。

犬の症候性てんかん

症候性てんかんとは、頭蓋内性のてんかんともいわれ、検査で大脳になんらかの異常が見つかるものです。
歳をとってから、初めててんかんを起こす犬にみられる特徴です。

犬の頭蓋外性てんかん

頭蓋外性は、脳が原因でない場合のてんかんです。

犬のてんかんの原因

犬の特発性てんかんの原因

犬の特発性てんかんの原因は、遺伝的や先天的なものが多いといわれています。
特発性てんかんが起こりやすい犬種は、ダックスフント・アメリカンコッカースパニエル・トイプードル・ゴールデンレトリバー・ラブラドールレトリバー・ミニチュアシュナウザーなどが挙げられます。

犬の症候性てんかんの原因

犬の症候性てんかんの原因は、脳の病気が原因の場合です。
症候性てんかんを起こす場合は、脳内の病気や何らかのトラブルが起こっている場合です。

犬の頭蓋外性のてんかんの原因

犬の頭蓋外性のてんかんの原因は、内分泌や代謝性の病気や、毒物を摂取した時に起こる場合です。

てんかんが起こる仕組み

てんかんが起こる仕組みは、神経の異常にあります。

犬の体には神経が張り巡らされていて、その中を弱い電気信号が通ることによって様々な情報処理をします。

特に脳内には様々な種類の、多くの神経細胞があり、目で見たもの、耳で聞こえたもの、味、においなどすべての感覚を神経を通して脳に伝えられます。

そして、足を動かしたり、吠えたり、食べたりという行動は、脳から神経を通して体に働きかけます。

このように犬にとって神経とは、体をコントロールする大切な組織なのです。

この神経に、何らかの原因から過剰に電気信号が発生することによって、乱れや興奮が起こります。

そうすると、脳が正常に情報を受け取れなくなったり、正常に体に働きかけることが出来なくなったりしてしまうのです。
この時に体に起こっている異常がてんかんです。

柴犬

犬のてんかんの症状

犬のてんかんの症状は、犬によって様々ですが、大きく分けて5つの種類があります。

犬のてんかんの症状① 間代発作

一つ目は、痙攣のような状態で、手足が一定のリズムで曲がったり伸びたりする「間代発作」と呼ばれる症状です。

何の前触れもなく急に、手足をバタバタさせる遊泳運動をしたり、体の一部がビクビクしたり、震えだしたり、口をクチャクチャしたりします。

犬のてんかんの症状② 強直発作

二つ目に、手足が突っ張って、体が硬くなる「強直発作」と呼ばれる症状です。

寝ている間に手足がつっぱったりする症状です。これは、伸筋という筋肉の過度な緊張が起こる症状で、まず横に倒れます。

その後、筋肉の過度な緊張と筋肉の緩みが交互に起こるようになり、最終的に筋肉のつっぱりが起こります。

犬のてんかんの症状③ 欠伸発作

三つ目に、突然短時間の意識を失う「欠伸発作」があります。意識を失うように急にバタンと倒れておしっこやうんちを漏らしてしまうことや、目の焦点が合わなくなること、よだれが大量にでることなどがあります。

犬のてんかんの症状④ ミオクロニー発作

四つ目に、全身や手足が一瞬ぴくっとする「ミオクロニー発作」

犬のてんかんの症状⑤ 複雑部分発作

があり、五つ目に、感覚や感情の変化、行動の変化などが表れる「複雑部分発作」があります。

これらの症状が起きている間は、意識はなく、目は開いたままですが、焦点は合いません。そして、数秒~約2分以内その状態が続きます。

発作が治まれば、しばらく意識が朦朧としていたり、ボーッとしていたりして、落ち着けば元の状態に戻ります。

てんかんが軽く短い間であれば、すぐに元の状態に戻り、何ともなかったかのようにしている犬もいます。

てんかんがおきた時の対処法

愛犬がてんかんを起こすと、とてもびっくりすると思います。

てんかんは急に起こることが多く、発作が起こっている途中の状態は見ていられない、という飼い主さんも多いです。

飼い主さんのほとんどは、初めて愛犬のてんかんを見た時、パニックになり何もすることが出来ないようです。

そして、動物病院へ連れて来て、てんかんの状態を聞いた時にも飼い主さん自身がパニックになっているため、状態を把握していないことが多いです。

実際、動物病院へ連れて来る頃にはてんかんも収まりケロッとしている犬がほとんどですので、その時の状況というのは飼い主さんにしかわかりません。

パグ,風邪

愛犬がてんかんをおこしたら

愛犬が急にてんかんを起こした時は、まず落ち着いてください。

てんかんの発作が起こっている時は、意識がない場合がほとんどで、犬本人も自分の体のコントロールが出来ないということは頭に入れておいて下さい。

びっくりして、身体を揺らしたり抱き上げたり、大きな声で呼びかける飼い主さんも多いです。

しかし、コントロールが出来ない状態では、あまり刺激すると危険な場合もあります。

てんかんが起きた場合は、落ちついて、周りにある物をのけるなど、発作中に犬が怪我をしないようにしてあげてください。
発作中に噛まれたり、引っかかれる事もあるので、触るのであれば、激しく触ったりせず、優しく声をかけながら撫でてあげる程度にしましょう。

激しく触ると、神経を興奮させてしまい、発作を長引かせてしまう可能性もあるので注意が必要です。
そして、発作の時間、何回起きたか、どういう状態だったのかを記録しましょう。

落ち着けば動物病院へ連れて行きましょう。

その際、記録した情報を獣医師に伝えることが大切です。
最近では、スマートフォンなどで動画を撮って獣医師に見せると伝わりやすいですので、おすすめです。

実際の動物病院の現場では、入院中の犬がてんかんを起こすことがたまにあります。

動物病院の入院ケージの中でてんかんをおこすと、従来以上に激しく暴れるようなてんかんの症状がでてしまうこともあります。その際は、ケージの壁や扉に激しく顔や頭、全身をぶつけて怪我をしてしまうこともあります。

そうなると、本来の治療とは別に、怪我をした場所の治療も追加で必要となってきます。

また、発作中に舌を噛まないようにと口に手や物を入れる飼い主さんもいますが、絶対に口に手や物を入れないようにしてください。

口に手を入れると、飼い主さんが噛まれて怪我をする可能性があります。

てんかん中の犬は体の自由が利かないので、強い力で噛んでしまう可能性が高いです。

また、物をいれると、歯の損傷や、異物の誤飲による窒息などの可能性があり危険です。

このように、てんかんは対応を間違えると二次的な被害・怪我の可能性があるので、家で犬がてんかんを起こした場合は、ケージの中でなるべく怪我をしないように柔らかい素材のものをひいたり、壁にもクッションの役割のあるものを付けたりする工夫をしたり、手を口に入れないのはもちろん、誤飲のリスクがあるものを放置ないないなど、準備が必要となります。

万が一、てんかんを起こした際に犬が怪我をしてしまったら、獣医師にその旨も伝えるようにしましょう。

犬のてんかんの治療法

犬のてんかんの治療法は、抗てんかん薬療法が一般的です。

抗てんかん薬とは、てんかんを抑制する薬です。

抗てんかん薬は、治療を開始する前に何度も長期的にてんかん発作を起こしている犬に比べて、初期に治療を始めることによって量が少なくて済むということと、長期的に発作の制御になることに有効的です。

てんかんが起こった場合は、出来るだけ早めに動物病院へ行き、治療にかかる方がいいということです。

まず、犬の血液検査などの検査を行って、その結果をみてから治療を開始する方法が一般的になります。

抗てんかん薬は、いくつか種類がありますが犬の状態や検査結果によって使い分けされます。

一般的には、内服薬の薬が処方されます。しっかり獣医師の指示に従い服用させることが重要です。中には、てんかんが何日も起こっていないということで、自己判断で薬の服用を中止してしまう飼い主さんをよく見ます。しかし、薬を急にやめると、突然大きな発作が起こったり、再発したりする可能性があります。中止するときは必ず獣医師と相談して、慎重に中止する必要があります。

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重い犬のてんかん発作の場合

一般的なてんかん発作の場合は、錠剤タイプの抗てんかん薬を使用しますが、てんかん発作が5分以上続くような重いてんかん発作の場合は、緊急の処置をしなければいけません

このような時は、直接血管に管をいれて、静脈内に注射をしたり、点滴をしたりします。

しかし、この緊急処置ができるのは、てんかん発作が起きている時に来院した場合や、入院している時に起きた場合しかできません。

家では、このようなひどいてんかん発作が起こったときに使う、座薬もあり、多くの動物病院ではてんかん発作が起こった時のお守りとして、座薬を処方することも多いです。

てんかんの治療は全て獣医師が決めるものです。

獣医師の指示を守らず、自己判断で投薬をやめたり、量を減らしたりするとてんかんが悪化することがありますので、注意が必要です。

犬のてんかんからみる考えられる病気

突発性てんかんは明らかな異常が無い遺伝的なものが原因ですが、症候性てんかんは、脳に何らかの病気が隠れている場合があります。

また、頭蓋外性のてんかんも脳以外に何らかの病気が隠れている場合があります。

症候性てんかんと頭蓋外性の、てんかんからみる考えられる主な病気を挙げていきます。

犬のてんかんからみる考えられる病気 症候性てんかん

  • 先天的な脳内の奇形

脳は電気信号を送り働きが自らの意志に従って体を動かす機能がありますが、近親交配や血縁の近い犬同士での交配によって生まれた犬は奇形を持つ傾向にあり、それが脳に現れて生まれることがあります。その際、大脳ニューロンに奇形がある場合、正しく電気信号を伝達できなくなり、てんかんが起きてしまいます。

  • 脳腫瘍

脳内に腫瘍ができ、その腫瘍が大きくなると大脳に影響を及ぼしたり、大脳自体に腫瘍ができると、脳の奇形と同様に脳が正常に働かなくなりてんかんがおきたりすることもあります。

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2018.02.08
  • 水頭症

水頭症とは、脳内に水(脳脊髄液)が溜まる病気です。脳脊髄液とは別名髄液と呼ばれ、脳室からの廃液ですが、脳の水分量の調整や脳の形状を保つことに使われます。

この脳脊髄液が、異常に溜まることによって脳室が拡張され、脳内の圧があがり、脳が正常に働かなくなります。その結果、脳の信号伝達がうまくいかなくなりてんかんが起きます。この水頭症は1歳未満の子犬に多くみられる傾向にあります。

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2018.02.08
  • 脳炎

脳炎は脳の炎症ですが、感染症などでウイルスが脳に入ることによって起こります。こちらも脳の伝達機能が正常に働かなくなることでてんかんが起こります。

  • 髄膜炎

髄膜は、脳を覆っている薄い膜のことです。この膜に起こる炎症のことを髄膜炎と呼びます。てんかんは大脳ニューロンの伝達機能の異常ですが、大脳は脳の大部分を占めており、それを多く髄膜に炎症が起こると、大脳に影響する可能性が大きく、髄膜炎によりてんかんが起こる場合もあります。

  • 脳出血

脳出血は脳内の血管が突然やぶれて出血が起こることです。脳内に血液が溜まり、脳内の圧力が上がることや脳を刺激することでてんかんが起こります。

  • 脳梗塞

脳梗塞も脳の血管障害ですが、何らかの原因によって脳の血管が破裂して血栓が動脈に詰まり、血流が悪くなることで起こります。脳に必要な血液が送られなくなることで、脳の機能が低下し、てんかんが起こります。

犬のてんかんからみる考えられる病気 頭蓋外性のてんかん

  • 糖尿病

人間でも起きますが、血液中の血糖値が高くなる病気です。血糖値を下げるインスリンというホルモンが正常に働かなくなることで起きます。

糖尿病の合併症は、神経系の異常があり、その結果、てんかんが起きます。

犬の糖尿病の症状や原因、治療方法について。【動物看護師が解説】

2018.02.08
  • 低血糖

血液中の血糖濃度が低くなってしまうことによって、脳内の細胞への栄養補給が不足してしまいエネルギーが不足することで、脳が正常に働かなくなります。

  • 肝硬変

様々な原因によって肝臓がダメージを受け線維化し硬く変質する。肝臓は代謝機能を司る臓器であり、肝臓の機能が低下すると、代謝機能も低下します。

例えば糖質代謝が落ちると、脳細胞の低血糖が起き、脳の機能が低下します。アミノ酸代謝が落ちると、アミノ酸欠乏もありますが、脳脊髄液のアミノ酸値が増加し脳障害が起きます。脂質代謝機能が低下すると、不十分な代謝が起こり脳細胞に悪影響を及ぼします。このように肝臓の機能が低下すると、脳細胞に悪影響がおこり、てんかんに至ります。

  • 肝性脳症

肝硬変同様、肝機能が低下し起こる脳症です。

  • 肝炎

肝炎は肝臓の炎症であり、これも肝臓の機能が低下し、代謝機能不全が起きます。その結果、脳細胞にダメージを及ぼし、てんかんが起こります。

それぞれのてんかんの種類によって、考えられる病気はとてもたくさんあります。

実際、愛犬にてんかん発作が起きた場合には検査をしますが、はっきりした原因が突き止められないということも少なくありません。

犬にてんかん以外に他の症状が出ていたら、このような他の病気が隠れている場合がありますが、はっきりと確定することはとても難しいことなのです。

はっきりした原因が分からないまま治療をしている犬は多いのが現状です。

原因や病気をはっきりとさせたいのであれば、検査機器が豊富な大きい動物病院へかかることをおすすめします。

この記事のまとめ

  • てんかんとは、大脳の伝達機能の異常により意思とは関係なく筋肉が動いてしまう疾患
  • 直接的な原因は脳の疾患だが、脳細胞に適切に栄養素がいかなくなる血液異常や肝機能(代謝)異常も原因である
  • 症状は、筋肉が繰り返し動いたり、筋肉が硬直したり、気絶しよだれが出たりなどの発作
  • 完治はできないが、薬によって症状を軽減できる

犬のてんかん さいごに

てんかんは、痙攣などの症状が起こり、飼い主さんにはびっくりする疾患ですが、焦って、口の中にてをいれたり、揺さぶったりすると、愛犬や飼い主さんの二次的な怪我にもつながります。落ち着いて対処するようにしましょう。また、投薬によって一時的に症状が改善しますので、薬を独断でやめてしまう飼い主さんもいますが、勝手にやめず、獣医の指示に従った対応をするようにしましょう。