犬の安楽死について。方法や費用について解説


犬の安楽死とは

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人の場合、国によって安楽死は自分の意思で選択することができます。

例えば、末期ガンの患者さんが、残り少ない寿命が、さらに寿命が縮んだとしても、少しでも痛みなく過ごしたいと望むか、最後まで諦めずにガンと戦い、痛みに耐えてでも延命することを選ぶか。
または、自ら旅立つ日を決めることができます。

でも、犬にはそれができません。

どんなに痛くても、辛くても、飼い主さんが何もしなければ、息をひきとる瞬間まで、苦痛に耐えなければなりません。

そこで、どうしても治らない病で、身動きも食べることもままならない状態になった時、飼い主と獣医さんの判断で、楽にしてあげようというのが、「安楽死」になります。

犬の安楽死の基準は?法的には?

犬の安楽死に関しては、獣医さんと飼い主が何度も話し合いをした上で、どう頑張っても、これ以上良くならないようなガンや、治療法が確立されていないような病気など、犬にとって、耐えられない苦痛しかないという場合に限り、安楽死という選択肢が生まれます。

また、その判断は、飼い主さんのみの判断では行えず、必ず獣医さんの判断が必要であり、安楽死は獣医さんの手で処置する必要があります

◆獣医さんが考える安楽死の基準

  • 末期ガンや難病で死期が迫っている
  • 治療の施しようがなく犬には苦痛しかない
  • 犬に耐えられない苦痛があり、薬でコントロールすることが不可能
  • 家族全員が安楽死に同意している
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法的にみる犬の安楽死

犬の安楽死という選択は、法的に見てどうでしょうか。

人間の場合、日本では認められていませんよね。

動物愛護法を見ると、

  • 「動物が命あるものであることに鑑み、何人も、動物をみだりに殺し、傷つけ、又は苦しめることのないようにするのみでなく人と動物の共生に配慮しつつ、その習性を考慮して適正に取り扱うようにしなければならない」

(第1章:基本原則第2条より)

とあります。

このことから、私たち自身が勝手に犬の安楽死を安易に選んではいけないことがわかります。

また、やむおえず安楽死させなければならない場合の法律も載っています。

  • 「動物を殺さなければならない場合には、できる限りその動物に苦痛を与えない方法によってしなければならない」

(第5章雑則 第40条)

この意味は、正当な理由がある時のみ、獣医師の資格を持つ医師のみが、苦痛を与えない方法でのみ、安楽死の処置を行えるということになります。

動物愛護の面から見ても、安楽死というのは簡単な選択ではなく、あくまでも最後の手段であることがわかります。

手に負えない凶暴な犬だから安楽死はOK?

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愛犬家の人にとっては、耳を疑うような質問ですよね。

基本的に手に負えないほど凶暴になってしまった犬は、飼い主の責任でもあります。

ちゃんとしつけができなかった結果であり、その後始末として安楽死は、あまりにも無責任です。

そして、そういった理由では、ほぼどこの動物病院でも受けてはもらえないでしょう。

ただし、凶暴になってしまう原因には、レイジ・シンドロームなど不治の病の場合が稀にあります。

または、老化による痴呆の場合もあるでしょう。

ただそのどちらも、ある程度薬などでコントロール可能な症状のことが多いです。

自分の犬が凶暴だからという身勝手な理由で、飼育放棄をすることがないように心からお願いします。

自分で手に負えない場合は、獣医さんへ相談したり、ドッグトレーナーに相談するなど、周りに助けを求めてください。

きっと解決方法があるはずです。

どうぞ大切な命を、簡単に消してしまわないでください。

犬の安楽死はどこでするの?

やむ負えない理由で、安楽死を選んだ場合、まず、安楽死はどこでできるのかお教えします。

方法は2つ。

動物病院か、獣医さんに往診に来てもらい行います

そこに至るまでの間には、何度も獣医さんと話し合いを重ね、予定を合わせ、その日を決めることになります。

思いつきですることは絶対にありませんし、あってはならないことです。

犬の安楽死は保健所でもできる?

まず最初に言っておきます。

保健所で行っているのは、安楽死ではなく「殺処分」になります。

その地域によってやり方は違いますが、ほとんどがガスを使っての窒息死か、麻酔薬を使ったあと、筋弛緩薬を使い殺処分します。

どちらの方法も、間違いなく苦痛を伴います。

犬の安楽死の費用

続いて、犬の安楽死の費用についてご説明します。

一般的にはおよそ処置自体は1万円くらいが多いようです。

ただ、往診やそれ以外の診療があった場合は、それらも含めての金額になります。

また、安楽死に関しては、獣医さんにもそれぞれ考え方があり、極力したくない方針の病院の場合、安楽死の費用を、わざと高く設定しているところもあります。

犬の安楽死の方法

苦渋の選択で、犬の安楽死を選び、獣医さんの同意後の手順を説明いたします。

獣医さんとの話し合いで決めること

  • 日程
  • 場所は病院か自宅でかを決める
  • 誰が立会いをするか
  • 犬を飼い主さんが抱きかかえてするか、寝かせるかなど、見送り方を決める

などを話し合い、事前に段取りを決めておきます。

また、安楽死の方法の説明もそのときありますので、どんな些細なことでもちゃんと確認し、納得した上で決めることが大切です。

疑問があるまま、何となく言われるまま…では、後悔することになります。

飼い主が愛犬のためにするべきこと

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飼い主さんは、最後の最後、愛犬に何ができるかを考えてあげましょう。

例えば、

  • 思い切り食べたいものを食べさせてあげる
  • 安楽死までの残された時間をとにかく一緒に過ごす
  • 愛犬が大好きだった場所に連れて行く
  • 愛犬に思いきり好きなように、わがままをさせる
  • 愛犬と記念写真を撮る

など、思いつく限りのこと全てをやってあげるくらいの気持ちを持ちましょう。

犬の安楽死に向かう日

犬の安楽死のほとんどは、病院で行うでしょう。

病院へ行く当日は、帰ってきてから襲ってくる悲しさを、少しでも抑えるために、愛犬の使っていたベッドやお気に入りのおもちゃ、ご飯のお皿など、できればダンボールにまとめるなどして、見えないところにしまってしまいましょう。

また、1人暮らしをしている人なら、1人で帰る空っぽの家は耐え難いものがあります。

ぜひ、誰かに来てもらうようにお願いすることをおすすめします。

犬の安楽死で使う薬剤

安楽死の方法は、一般的には薬剤投与になります。

まずカテーテルで麻酔を静脈に入れ、その後、ペントバルビタールナトリウムという薬剤を入れていきます。

内臓、心臓、脳の機能が全て停止し、保健所のものと違い、苦しむことなく眠るように息を引き取ります。

犬の安楽死。犬は苦しむのでしょうか?

最後の選択としての安楽死。

生きて、息をしているだけでも辛いという状況の場合、生きていて欲しいと願う反面、もう苦しませたくないと心から思います。

安楽死を選ぶ時によぎるのが、苦しまないで逝けるのかどうか…

悶え苦しむということはありません。

とても強い薬の使用なので、一瞬で息を引き取ります。

ただその一瞬はどうなのか、犬自身にしかわからないことでしょう。

ただ確かなのは、一瞬の苦しささえ越えれば、ずっと長期間続いた痛みや苦しさからは解放されます。

犬は本当に、私たちが思う以上に感受性が強く、人の思いを瞬時に察知します。

なので、もしかしたら安楽死をする日の緊張感や喪失感など、想像もつかない恐怖を感じるかもしれません。

飼い主さんに平静でいてというのは、到底無理な話ではありますが、少しでも愛犬を不安にしないように、その日は少しでも毅然に振る舞い、思い切り抱きしめてあげてください。

犬に安楽死を選択するということ

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何度も言いますが、安楽死を決断するのは、簡単なことではありません。

犬は、自分で自分の生死を決めることはできません。

今この一瞬を必死に生きるだけです。

どうするかを決めるのは、飼い主さんになります。

QOL(クオリティーオブライフ)を考えたとき、犬にとっての幸せが、楽になることしか選択肢がない場合、それを選んであげる強さも、飼い主さんには必要です。

最後の最後まで、痛みと戦う愛犬と一緒に戦うか、たとえ、一緒にいる時間が減ってしまっても、少しでも早く、痛みから解放してあげるべく安楽死を選ぶか。

愛犬を大切に思っていればいるほど、簡単ではありません。

でも、安楽死を選ぶ=冷たいひどい人間とは思わないでください。

一生懸命必死に考え、悩んだ結果であれば、それはあなたの愛犬にとって、ベストな決断だったのです。

犬の安楽死のタイミングって誰が決めるの?

では安楽死っていつどのタイミングで決めるのでしょうか。

例えば、もう治りませんと余命宣告された時?

もう何の薬も効かず、八方塞がりで苦しむだけの状態になったら?

難しい決断ですよね。

犬は、私たちと同じ言葉で話してくれることはありません。

ではどうしたら?

安楽死に至るまでの間は、獣医さんと連携してあらゆる手を尽くすでしょう。

その中で、どうぞ愛犬の必死に生きようとする姿から目を離さないでください。

一生懸命食べ、動こうとし、家族に笑顔でしっぽを振る姿は、どんなに体がきつくても、頑張って生きようとしている姿なのかもしれません。

生きようとしている愛犬には、まだその時は来ていません。

ただやはり、病は進行していき、犬の自由がどんどん奪われ、前向きに生きる姿が見えづらくなってきた時

それが、安楽死のタイミングと思っていいでしょう。

必死に頑張って生き、限界を超えてまで苦痛の中、体にムチを打たせないよう、私たち飼い主は、目を離さず一緒に最後まで戦ってあげてください。

アメリカに見る犬の安楽死について

アメリカはペット先進国になります。

アメリカ人のペットに対しての意識が高く、熱い動物愛を持っている人が多く、犬の飼い主たちは犬の飼い方始め、しつけ、病気やケガなどの専門知識を持っていることが多いです。

また獣医学も同様で、日本の10年先をいっているという人もいます。

そんなペット先進国のアメリカでは、安楽死というものは、日本よりもかなり身近にある存在だといいます。

例えば、末期ガンと宣告され、手術する体力もなく、痛みを薬で抑えるのみが残された方法のとき、

  • 日本なら…100%の痛みコントロールができなくても延命治療
  • アメリカでは…100%痛みコントロールができない場合、飼い主の了承のもと安楽死

になります。

アメリカ人にとってペットが病気や年老いたら用済み!?

だから簡単に安楽死を選ぶの?

そんな風に考えたくなりますよね。

でもアメリカ人はそんな風には決して考えていません。

アメリカ人と日本人が考える安楽死に対しての考え方が全く違うのかもしれません。

アメリカ人は犬を心から愛し、人間と対等に考えています。

犬が犬らしくいられないのなら、犬にとって日々の生活は苦痛でしかないはず。

毎日顔を見て、暖かい体に触れたいと考えるのは、アメリカ人飼い主も同じ気持ちです。

でも大きな違いは、犬には犬の尊厳があり、人間のエゴでそれを侵してはならないと思っています。

そして安楽死を選ぶには、日本同様、それ以外に選択肢がないと判断した場合になります。

日本との違いは、寝たきりになってオムツをする毎日でも、生きていることに意味があるという見方をするか、犬らしくはしゃぎ、走り、思い切り食べられないのなら…と見るかの違いではないでしょうか。

どちらも間違いではありません。

どちらも愛犬のことを一生懸命考えて出した答えなのですから。

犬の安楽死と飼い主のペットロス

安楽死を決断して、最愛の犬を見送った飼い主さんたちは、少なからずみな、自己嫌悪に陥るといいます。

「自分の選択は正しかったのだろうか」

「本当はもっと生きたいと思っていたのではないだろうか」など、自問自答を繰り返すそうです。

どうか、自分を責めないでください。

愛するあなたの犬は、苦しみから解き放たれたのです。

あなたがどんなに愛犬を愛していたか、彼らはちゃんと理解しています。

大切なのは、どんな死に方をしたかではなく、どんな生き方をしたかです。

愛犬を失って、ペットロス症候群になってしまうことも少なくありません。

悲しいときは思い切り悲しみ、愛犬のことを思い出してください。

泣きたい分泣き、できれば、その思いを共有できる人とたくさん話をしましょう。

そしていつかまた、あなたのパートナーになるべく犬に出会ってください。

見送ったあなたの愛犬も、きっとそれを望んでいるでしょうし、もしかしたら、その愛犬が生まれ変わってまた、あなたの元に戻ってくるかもしれません。

この記事のまとめ

犬の安楽死について。方法や費用について解説
  • 犬の安楽死とは、飼い主(及び家族)と獣医さんの判断で犬を楽にさせてあげること
  • 安楽死は犬にとって、耐えられない苦痛しかないという場合に限り行える
  • 安楽死は動物病院もしくは、往診で行う
  • 保健所では安楽死の処置ではなく、殺処分のみ
  • 法的に安楽死は致し方ない場合のみ合法
  • 犬の安楽死の費用はおよそ1万円
  • 犬の安楽死・獣医さんと決めること:日程、場所、立会人、犬の見送り方など
  • 犬の安楽死・飼い主ができること:食べたいものを食べさせる、一緒に過ごす、愛犬の大好きな場所に連れて行く、わがままをさせる、記念写真を撮るなど
  • 犬の安楽死で使う薬剤:ペントバルビタールナトリウム

犬の安楽死について さいごに

元気に走り回り、かわいくて仕方ない笑顔を向けてくれる愛犬を眼の前にして、「安楽死」というワードはとても怖く冷たく、考えたくもないテーマかもしれません。

でももしかしたら、今こんなにも元気な愛犬も、将来大きな病が襲うかもしれません。

または現時点、愛犬とともに戦っている最中の人もいるかもしれませんね。

安楽死は大変つらいことですし、難しい決断になります。

でもそれを選ぶことは、間違いではないということを忘れないでください。

愛犬が体を張って、私たちに教えてくれるたくさんのことを、私たちは確実に受け止めて行く必要があります。

時にそれは「安楽死」という判断をする、胸が張り裂けることだったとしても。