獣医師が解説するトイプードルにかかりやすい病気 Vol.5

人気犬種トイプードルがどのような病気にかかりやすいか知っておこうシリーズVol.1では、門脈体循環シャントについて、Vol.2では膝蓋骨脱臼とレッグペルテスという関節の病気について、Vol.3では進行性網膜萎縮症(PRA)と白内障について、Vol.4では、流涙症とクッシング症候群について解説していきました。ここVol.5では、気管虚脱と僧帽弁閉鎖不全についてご説明していきたいと思います。

気管虚脱

この気管虚脱という病気は、トイプードルを含む小型犬に多くみられます。ガーガーとまるでガチョウの様な咳がみられるときは、注意が必要です。

病気の定義

気管虚脱とは、専門的にいうと、呼吸に伴って胸腔外または胸腔内の気管内径が力学的に減少する疾患です。つまり、先天的な問題をはじめ色々な原因から、横断面にすると円形であるはずの気管が、呼吸に伴ってペタンとつぶれてしまう病気です。

症状

以下のような症状がみられたら注意が必要です。
  • ガーガーとガチョウ様の咳
  • 興奮時、運動中または首輪が頸部を圧迫するときに咳が悪化する
  • ガハーッと何かを吐き出そうとする動作(気道の分泌物を取り除こうとする動作)
  • 咳をしているとき下の色が紫色になる(重症時)
  • 呼吸困難(重症時)

診断

頸部と胸部のレントゲン検査で診断されることが最も多いです。胸部外気管、つまり首のあたりの気管の虚脱は、息を吸うときにおこります。一方、胸部内気管の虚脱は、息を吐くときにおこります。レントゲン検査は、吸気時と呼気時に実施され、両者のレントゲン画像を比較するとそれぞれの部位によって気管が虚脱しているのが分かります。

治療

一般的に、内科学的治療が適応になることが多いです。症状によって鎮咳剤、気管支拡張剤、鎮静剤ときにはステロイド剤などの内服薬が選択されます。胸腔外の気管鏡脱に限って起こる場合は、外科的な整復手術がおこなわれこともあります。具体的にはC型ステンという気管の円形を保持する器具を気管内の装着するという手技です。

ポイント

トイプードルは、一般的にフレンドリーで飼い主がおうちに帰ってきたり、お散歩で他の犬にあったりすると喜んで興奮しがちですが、過度な興奮はこの病気によくありません。なので、なるべく興奮しない環境作りが必要です。また首輪を使用している場合は、首を圧迫しないようハーネスタイプのものに変更しましょう。肥満も悪化要因の一つですので、気をつけてあげましょう。

僧帽弁閉鎖不全症

トイプードルを含む中高齢の小型犬でよくみられる病気です。年をとってきて、咳がみられるようになってきた場合は注意が必要です。

病気の定義

僧帽弁閉鎖不全症とは、専門的にいうと、僧帽弁の粘膜腫様変性により僧帽弁逆流をおこす病気です。つまり、左心房と左心室の間に位置する僧帽弁という弁膜が変性をおこしてしまい、左心房から左心室へという一方向であるべき血液の流れが、逆流を生じてしまうという病気です。

症状

初期は無症状ですが、以下のような症状がみられたら注意が必要です。
  • 発咳
  • 興奮時、運動時など舌の色が紫色になる(重症時)
  • 呼吸困難(重症時)

診断

初期が無症状のため、健康診断の際に聴診で心雑音が聴取され、レントゲン検査、超音波検査で診断されることが多いです。

治療

一般的に、内科的治療で長期の咳のコントロールを目標としていきます。症状にあわせて、食餌療法や血管拡張剤、利尿剤、強心剤、β遮断薬などの内服薬が選択されます。また、近年では循環器専門の病院や大学病院などで、外科的治療として、僧帽弁弁置換術や弁形成術などの手術も新たな治療法の一つとして注目されています。

ポイント

僧帽弁閉鎖不全症は、定期的な健康診断で、聴診をしっかりしてもらうことが早期発見のカギです。また、中高齢になってみられる咳は、この病気だけに限らず、気管虚脱など他の病気と合併していることも少なくありませんので、動物病院でしっかり検査してもらいましょう。